宗教研究
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曽我量深の『仏説観無量寿経』における釈迦領解
松山 大
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2014 年 88 巻 1 号 p. 123-147

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抄録

『仏説観無量寿経』理解において登場人物の解釈の仕方は重要である。ところが曽我量深はその教学的根拠である親鸞等とは異なり、『観経』の登場人物全てを凡人であると発言している。特に釈迦を凡人と解釈することは仏教徒としては特異な観点である。そこで本稿では、この発言が成された理由を当時の曽我の著作から考察した。一、曽我は近代という時代状況に対応するため、釈迦観を発言した。二、曽我は真宗の二尊教という教学を立場にして、釈迦を如来ではなく一人の人間と考えた。そのため、釈迦を凡人であると発言した。三、曽我は、親鸞と異なる観点から釈迦を凡人と定義しているのではない。使用されている語句は異なるが、親鸞の『観経』領解の真意を曽我が明らかにしたのである。以上三点に渡り究明した曽我の発言の意図は、『観経』における釈迦理解を通じた、普遍的な宗教上の主体及びその帰依の対象の確定と考えることができるのである。

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