宗教研究
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スピリチュアリティの倫理とグローバル資本主義の精神? : アメリカ由来の自己啓発言説に注目して(<特集>しあわせと宗教)
小池 靖
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2014 年 88 巻 2 号 p. 291-314

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抄録

海外の研究者によれば、グローバル化する職業世界において、ますますスピリチュアルな論理が広がりを見せているという。そうした「ワークプレイス・スピリチュアリティ」の典型例として、自己啓発書『7つの習慣』が言及されてきた。そこで本稿では、日本の『7つの習慣』現象をフィールド調査し、スピリチュアリティの倫理と現代のグローバル資本主義との親和性を考察した。分析の結果、先行研究の見方とは異なり、企業研修では、常識的な対人関係観が説かれ、かつ、スピリチュアリティは極めて抑制的に語られていることが明らかになった。コミュニケーションの言説も、スピリチュアルというよりはセラピー的な語彙にほぼとどまっていた。そのような絶妙なバランスの上に、現実のグローバルな文脈での職業倫理は成立している。調和的な対人関係観については、新宗教的な源泉を読み取ることは不可能ではないが、それも宗教性を脱色した形で語られていることを示唆した。

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© 2014 日本宗教学会
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