宗教研究
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論文
どのように文部省は宗教行政を掌握したのか
江島 尚俊
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2018 年 92 巻 3 号 p. 1-24

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抄録

本稿は、明治三〇年代から大正初期にかけて行われた行財政改革に焦点をあてて、大正二年六月に文部省が宗教局を所管する、言い換えれば、文部省が宗教行政を制度的に掌握するまでの経緯を明らかにしている。まずは、明治三五年七月に当時の法制局長官奥田義人によって第一次桂内閣に提出された『奥田案』が黙殺されたことで、文部官僚による宗教行政所管構想が一旦は挫折したことを明らかにした。次に、第二次西園寺内閣時の内相原敬が実行した内務省改革と内務省主導の地方行政改革が、従来の神社行政・宗教行政に大きな変化をもたらし、その結果、文部官僚らの所管構想は更に後退したことを指摘した。そして最後に、第一次山本権兵衛内閣時の内相原と文相奥田による協働の結果、大正二年六月に内務省から文部省へ宗教局が正式に移管され、明治三〇年頃からの文部省の宿願がようやく結実したことを論じた。

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