本論文の目的は、日本の新宗教の体験談を救済とジェンダーの観点から検討することを通じて、宗教研究に「ジェンダーの視点が不可欠」であることを改めて確認することである。
「生命主義的救済観」論文は、日本の新宗教に共通する信念体系を論じたものとしてよく知られる。この「救済観」にジェンダーの視点は考慮されていない。だが、具体的な個々の体験談においてはジェンダーによる影響が現れる。
本論文では、複数の教団の体験談から父母、夫妻の物語を取り上げ、そこに働くジェンダー秩序の影響を検討した。
結果として、苦難や救いに対する意味づけの部分において、ジェンダー秩序が大きく影響を与えていることが確認された。救済観とジェンダー秩序は、ともに社会変動の影響で変容している。宗教研究に社会変動の視点が不可欠なのと同様に、ジェンダーの視点が不可欠であると確認できる。