宗教研究
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論文〔特集:宗教と越境〕
中国語圏における「人間仏教」
その思想と実践
何 燕生
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2020 年 94 巻 2 号 p. 81-108

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抄録

「人間仏教」は太虚によって提唱された中国仏教復興のための指導理念であり、二〇世紀以来、中国本土はもちろん、海外の中国人社会における仏教の共通の思想である。

本稿は、太虚およびその弟子の印順の主張を通して、「人間仏教」の思想とは何かについて、具体的に確認するとともに、「人間仏教」という理念の下に行われている台湾の仏光山や慈済会および東南アジアの中国人社会における実践活動を取り上げて考察することを目的とする。

「人間仏教」の主張は仏教思想の近代的再解釈であり、その理念のもとに行われている活動は、いわゆる「社会参加仏教」に近い要素をもっている。しかし、「近代仏教」およびEngaged Buddhismなどの分析枠で捉えるには限界がある。本稿はそれらについて問題を提起し、中国語圏における歴史的社会的政治的文脈を重視する視点が必要であることを指摘した。

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