2020 年 94 巻 3 号 p. 49-73
アメリカにおいて二〇世紀前半は、移民排斥や神学的保守主義の台頭によってアジアの宗教への風当たりが厳しい時代だったと言われる。しかし本稿では、非教派雑誌『クリスチャン・センチュリー』の分析を通して、当時のアメリカのプロテスタント教養層が、変動するグローバルな情勢(世俗主義の台頭や海外宣教の変容)を見極めながら宗教間の関係性をダイナミックに再定義していったことを指摘する。確かに一九一〇年代の同誌では、キリスト教の真理の包括性・優越性が自明視されており、他宗教はキリスト教によって置換ないし根絶されるものだという考えが根強かった。しかしこの論調は一九三〇年代前半までには勢いを失う。特に同誌が、他宗教への寛容さで知られる報告書『宣教再考』(一九三二年)を擁護する論陣を張ったことは極めて示唆に富む。これは同誌においてキリスト教の真理の優越性を擁護する熱意が衰え、宗教間対話・協力の模索が始まったことを意味している。