宗教研究
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論文
エリアーデのインド体験とインド先住民の巨石文化
アルカイック宗教論から人類の宗教史へ
外川 昌彦
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2024 年 98 巻 1 号 p. 1-25

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抄録

本稿は、ミルチャ・エリアーデのアルカイック宗教論の形成を、近年の人類学や認知科学、霊長類学などの関連領域の新たな知見を参照し、また、一九二八―三一年のインド留学の経緯から、特にインド先住民の巨石文化を捉える視点を通して検証する。ルーマニア鉄衛団運動の影響を受ける以前の、アルカイック宗教論の揺籃期にさかのぼって検証する事で、人類の宗教史に向けた、エリアーデ宗教論の課題を克服する手掛かりを検証する。特に本稿では、エリアーデが「もっとも古代的な部族」として言及したインド先住民のムンダ人社会を取り上げて、墓石への聖化儀礼の事例から、親族関係や土地所有関係と不可分な巨石文化の意味を明らかにする。それを通して、「先史から今日に至るまでの人間と聖なるものとのあらゆる種類の出会いを解読」するというエリアーデの「包括的解釈学」の方法論的な意義を捉えなおし、人類の新たな宗教史を開く可能性を検証する。

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