レギュラトリーサイエンス学会誌
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特集(創薬に向けたヒト細胞・組織の利用)
トランスポーターが関わる薬物の体内動態予測におけるヒト由来組織利用の有用性
楠原 洋之前田 和哉
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2016 年 6 巻 1 号 p. 81-89

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抄録

医薬品の体内動態の予測は, 創薬プロセスの中で重要な位置を占める. それゆえ, ヒト臨床試験に入る前に精緻に体内動態を予測するために, in vitro-in vivo extrapolation (IVIVE) の考え方が用いられてきた. 薬物動態は, 数多くの代謝酵素・取り込み/排出トランスポーターによって構成される異物解毒システムの出力として決定されることから, 薬物動態関連遺伝子すべての発現が維持されているin vitro実験系でなければ, その予測は困難である. また, 個々の分子種の発現・機能には種差が認められることから, IVIVEの実践において, ヒト組織由来サンプルの利用は極めて有効な手段であるといえる. われわれはこれまで, ヒト凍結肝細胞や腎スライスを利用してトランスポーター機能のin vivo薬物動態に与えるインパクトを明らかにする研究に多数従事してきた. トランスポーター基質薬物の肝細胞や腎スライスへのin vitro取り込みクリアランスは, in vivoヒト肝 (腎外) ・腎クリアランスと良好に相関することを見出した. また, 各トランスポーター分子種のプローブ基質/阻害薬を用いることで, 薬物の組織取り込みに占める各トランスポーターの相対的な寄与率を見積もることに成功した. 一方, 薬物相互作用の予測に関しては, これまでcimetidineの併用投与による腎分泌低下のメカニズムはorganic cation transporter (OCT) 2の阻害と考えられていたが, われわれは, 腎排出トランスポーターmultidrug and toxin extrusion (MATE) の阻害が真の相互作用標的であることを見出すに至った.

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© 2016 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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