日本リモートセンシング学会誌
Online ISSN : 1883-1184
Print ISSN : 0289-7911
ISSN-L : 0289-7911
SARデータによるサロマ湖上の氷の研究
若林 裕之西尾 文彦
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 16 巻 2 号 p. 145-152

詳細
抄録

定常運用を行っているJERS-1及びERS-1に搭載されている合成開口レーダ(SAR)の海氷モニタリングへの有効性を確認するために,1993~1995年の3年間に衛星観測データにほぼ同期して,サロマ湖上の氷のトルースデータを取得した。サロマ湖はオホーツク海に接続している塩水湖であり,湖氷は塩分を含み海水が凍った一年氷とほぼ同じと考えられ,氷も安定しているので比較的容易にトルースデータが取得可能である。表面状態がほぼ同じで氷厚が異なる点をデータ取得点として設定し3年間で21点のデータ取得を行った。
SARデータから求めた後方散乱係数(σ0)と氷の物理量を比較解析することによって以下のことが確認された。
(1) トルースデータの解析から,サロマ湖上の氷は層構造,塩分プロファイル及び表面粗度等の点から北極圏での薄い一年氷(Thin first year ice)とほぼ同じとみなすことが可能である。
(2) 同じ地点のJERS-1及びERS-1で観測されたσ0を比較することによって, ERS-1のσ0はJERS-1よりも7dB程度高く,σ0の範囲も約3倍程度大きい。
(3) JERS-1及びERS-1のσ0と氷厚は負の相関があることが確認された。氷からの散乱は氷表面の散乱が支配的であると仮定するとこの現象は説明可能である。

著者関連情報
© 社団法人 日本リモートセンシング学会
前の記事 次の記事
feedback
Top