抄録
空中写真とGISによる崩壊の危険性の判定・危険度図の作成とその評価を,ネパール中央部のクレカニ川流域(124km2)を対象として行った。崩壊分布図は空中写真判読と現地調査をもとに作成した。崩壊地の要因解析にあたっては,斜面傾斜,斜面方位,標高,谷次数,尾根からの距離,谷からの距離,地質,土地利用状況の要素を計測して多変量統計手法を使用した。また,GISを用いて,ランダムサンプリングで選んだ崩壊地と3組の不規則層別非系統的サンプリングで選んだ非崩壊地のデータサンプルの組み合わせが,崩壊の主要な要因やクラスとその解析結果を使って作成されたハザードマップにどのような影響を与えるかを調べた。ハザードマップは,危険性の程度に従い,高・中・低・最低の4ランクに分類して示した。崩壊には地質が一番影響していることが判明した。そのほか標高,土地利用と方位の影響があることが分かった。崩壊地と3組の非崩壊地のデータサンプルの組み合わせの解析結果は崩壊の主要な要因やクラスに大きな差がないことを示した。このことは規則層別非系統的サンプリング方法が非崩壊地のサンプリング方法としては適切であったことを示唆している。したがって3つのハザードマップの精度は斜面災害防災・流域管理計画に実用的に使えると考えられる。