1988 年 27 巻 3 号 p. 150-156
プール用のトリクロロイソシアヌル酸および次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液における鉄およびアルミニウムの腐食を調べた.トリクロロイソシァヌル酸は水溶液中で解離して次亜塩素酸を生じ,さらに分解して塩酸となるので溶液は酸性となる.この分解反応は自己触媒的に進行する.このため鉄は全面腐食し,アルミニウムは孔食を起こす.一方,次亜塩素酸ナトリウムは分解すると食塩となるので溶液は酸性にならない.したがって次亜塩素酸ナトリウムの腐食性は低い.おのおのの溶液中におけるアルミニウムと鉄の腐食電位と溶液のpHの時間変化をプルベダイヤグラム上にプロットし,腐食様態を追跡した。錠剤が壊れてできた粉末状のトリクロロイソシアヌル酸がアルミニウム表面上に堆積した場合,その下に激しい孔食を生じた.食孔分布により腐食性を検討した.