2018 年 57 巻 1 号 p. 56-64
消防活動は,嫌気性代謝が卓越するほどの負荷のかかった状態で活動を継続する高負荷活動の一つである.このため活動時の隊員の労働安全の確保は非常に重要である.血中乳酸値は侵襲的に,呼気情報は非侵襲的に計測できる身体状態を評価するための指標であるが現場適用が難しい.本研究では,リアルタイムで非侵襲的に計測できる心電情報に注目し,時間的に負荷のかかり方が異なる3 種類の嫌気性代謝が卓越した負荷試験を行った.心拍変動の周波数解析と実測結果を基に,心肺機能への負荷状態を客観的に推測できる呼吸反射指標(RiR)を提案した.RiR の時間的な急上昇は,従来の血中乳酸蓄積開始点あるいは呼気情報から判断される嫌気性代謝が卓越しだす時間と良く一致することが判った.提案指標によりさらなる現場活動の安全化・効率化が期待される.