化学プロセス産業にとって,事故防止,即ちプロセス安全は,産業存立の前提であるが,近年,プロセス安全管理システムを確実に実行するための安全文化の重要性が認識されてきている.本稿では,プロセス産業ではじめて安全文化の重要性を指摘した原子力産業の取り組みの進展を紹介した上で,化学プロセス産業の取り組みの進展を詳述し,安全文化の要は,動機づけにあり,いつでも事故は起きうるという認識を維持することが重要だという最近の考え方を紹介する.動機づけを把握するために,安全文化を包含する文化そのものに対する社会心理学的な知見が有用であり,学術的な研究を概観した上で,文化の階層構造に関するモデルを紹介し,その中に含まれる価値観をインタビューにて把握しようとする最近の取り組みについても言及する.