2021 年 15 巻 1 号 p. 68-74
【目的】ホテル業界において人事責任者が高年齢従業員にどのような役割を期待しているのか質的調査によって明らかにする.
【方法】65歳以上の従業員を5部門中4部門以上に配置しているホテルの人事責任者7名を対象に半構造化面接を行った.当該ホテルは観光庁登録のホテル927施設を対象に行った調査に回答した289施設のうち,「高齢者の配置部門数」が上位13.5%以上に位置する.逐語録はSteps for Coding and Theorization(SCAT)を用いて分析した.
【結果】再雇用者(60歳未満から雇用されており,継続雇用を経て65歳で再雇用された者)は「福祉的雇用からの脱却」を大前提とし,多くは「若手社員を支え導くこと」,一部に「第一線で能力発揮すること」が期待されていた.一方,新規雇用者(60代前半に新規雇用され,65歳で再雇用された者)は「必要人員の底支え」であり,「不規則な勤務に快く対応」する「リーズナブルな即戦力」としての役割が期待されていた.
【結論】再雇用者と新規雇用者では人事責任者の期待する役割は異なっていた。企業の高年齢者に対する能力開発意欲は乏しく,かつ能力発揮への期待は限定的であることが示唆された.