2025 年 19 巻 1 号 p. 72-81
本研究は,経営者・役員を除く中高年労働者を対象に,職場における年齢差別が離職意向に与える直接的影響と,ワーク・エンゲージメントおよびメンタルヘルスの抑制効果を検討することを目的とした.調査には,アイブリッジ株式会社が運営するアンケートツール,FreeasyおよびFreeasy24を活用し,研究目的に応じて経営者・役員を除いた職種・雇用形態を限定しない50歳から99歳までの男女を対象とした.分析対象は,調査で得られた300名の有効回答者であり,欠測値はなかった.SPSS28のPROCESSマクロモデル6を用いて,分析を実施した.分析の結果,年齢差別の直接効果(.15)は有意であったが,ワーク・エンゲージメントとうつ傾向を介した間接効果(.02, p < .05)により離職意向が抑制されることが示された.これにより,ワーク・エンゲージメントの維持がメンタルヘルスに寄与し,年齢差別による離職意向を軽減する可能性が示唆された.