応用老年学
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追悼文
追悼集
原著論文
  • -昔の若者と最近の若者のイメージ比較-
    菊地 亜華里, Pongampai Korapin , 権藤 恭之
    2025 年19 巻1 号 p. 20-30
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/04
    ジャーナル フリー

     本研究は,高齢者から若者へのエイジズムとして「最近の若者効果」に注目した.70代高齢者(分析対象者390名)を対象に,「昔の若者」,全般的「若者」,「最近の若者」の順にイメージが肯定的であるという仮説を検証した.SD法でイメージを測定した結果,「良い–悪い」という全体的評価ではイメージ間に差がなかった.ただし,因子分析の結果,高齢者は若者イメージを,若者への印象全般を評価軸とした「力量性・活動性」と,社会的規範を評価軸とした「評価性」の2側面から評価しており,特に「評価性」の側面で,昔の若者を他の若者と比べて肯定的に評価していることが明らかとなった.昔の若者が常に肯定的に評価されるというバイアスが確認され,仮説が一部支持された.最近の若者効果は,最近の若者への絶対的な否定的評価が生じているのではなく,高齢者が現在の自分を投影した昔の若者への評価との相対的な差として生じていることが示唆された.

  • -カード型嗅覚同定検査を用いた検討-
    見形 紘子, 狩長 弘親, 兼田 絵美, 上城 拓也, 萩原 崇, 上城 憲司
    2025 年19 巻1 号 p. 31-39
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/04
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,精神科病院に入院中の認知症高齢者における嗅覚機能と生活機能を比較し,重症度別の特徴を明らかにすることである.嗅覚機能(OE),握力,歩行スピード,認知症の重症度,認知機能,認知症の行動・心理症状(BPSD),日常生活活動(ADL)および手段的ADL(IADL)を調査した.認知症高齢者を軽度群(10名)と中・重度(14名)の2群に分類し,重症度別に各測定値を分析した.結果,中・重度群は軽度群に比してOEおよび下位項目(メントール・カレー)の正答率,認知機能,IADLが有意に低値であり,BPSDは有意に高値であった.次にOE下位項目における正答率と自覚率の乖離は,軽度群で2倍,中・重度群では3.6倍となり,重症度の進行に伴う違いが確認された.これらの結果から,認知症の重症化に伴う嗅覚機能の低下や正答率と自覚率の乖離が,認知機能および生活機能に悪影響を与える可能性が示唆された.

  • 土井原 奈津江, 小熊 祐子
    2025 年19 巻1 号 p. 40-60
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/04
    ジャーナル フリー

     本研究は,2015年を転換点として2023年までに会員数を2倍に増加させ,活性化と持続的運営を実現した神奈川県藤沢市の老人クラブ「K会」を対象に,2009年から2023年までの運営を分析し,持続的運営の課題と方策を明らかにすることを目的とした.調査は,会員へのインタビュー,ドキュメント整理,参与観察を通じて実施し,定性データを再帰的テーマティック分析,定量データを記述統計の手法で分析した.持続的運営の方策として,(1)適応型リーダーシップ,(2)次世代につなぐ運営,(3)適応型組織運営,(4)地域共創共感プラットフォームの4つが挙げられる.これらはそれぞれ独立した視点を持ちながらも相互に密接に関連し,組織全体の活性化と持続可能性に寄与している.また,これらの方策は,老人クラブの持続的運営を可能にすると同時に,高齢者の社会参加や地域の活性化にも大きく貢献する.

  • 鷲巣 奈保子, 内藤 俊史
    2025 年19 巻1 号 p. 61-71
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/04
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,高齢者において未来展望が対象別感謝を介して精神的健康と関連をもつかを検討することである.60歳から79歳までの高齢者200名(男性100名,女性100名)を対象にweb調査を行った.未来展望を独立変数とし,対象別感謝の4カテゴリ(具体的対人感謝,抽象的対人感謝,具体的非対人感謝,抽象的非対人感謝)を媒介変数,精神的健康を従属変数として媒介分析を行なった.分析の結果,未来展望の下位因子「残された機会への注目」は,幅広い対象への感謝を介して精神的健康と関連をもっていた.高齢であっても未来に多くの機会や可能性が残されていると知覚している人ほど幅広い対象への感謝を感じやすく,そのような感謝を介して精神的健康が促進される可能性が示唆された.

  • 孫 潔
    2025 年19 巻1 号 p. 72-81
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/04
    ジャーナル フリー

     本研究は,経営者・役員を除く中高年労働者を対象に,職場における年齢差別が離職意向に与える直接的影響と,ワーク・エンゲージメントおよびメンタルヘルスの抑制効果を検討することを目的とした.調査には,アイブリッジ株式会社が運営するアンケートツール,FreeasyおよびFreeasy24を活用し,研究目的に応じて経営者・役員を除いた職種・雇用形態を限定しない50歳から99歳までの男女を対象とした.分析対象は,調査で得られた300名の有効回答者であり,欠測値はなかった.SPSS28のPROCESSマクロモデル6を用いて,分析を実施した.分析の結果,年齢差別の直接効果(.15)は有意であったが,ワーク・エンゲージメントとうつ傾向を介した間接効果(.02, p < .05)により離職意向が抑制されることが示された.これにより,ワーク・エンゲージメントの維持がメンタルヘルスに寄与し,年齢差別による離職意向を軽減する可能性が示唆された.

  • 岡﨑 和子, 岡山 寧子, 吉田 光由, 木村 みさか
    2025 年19 巻1 号 p. 82-92
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/04
    ジャーナル フリー

     高齢者におけるオーラルディアドコキネシスに対する体力(体力年齢FAS:Fitness Age Score)との関連を検討することを目的に,体力測定会参加高齢者331名を対象とし,体力,口腔機能,基本チェックリストなどの調査を行った.基本チェックリストによるフレイル該当者は男性12.7%,女性13.8%,オーラルディアドコキネシスによる舌口唇運動機能低下者は,男性64.8%,女性43.1%であった.分析の結果,オーラルディアドコキネシスは,性,年齢,残存歯数,舌圧などの交絡因子の影響を調整しても,体力(FAS)と独立して関連することが示された.これらから,舌口唇運動機能と体力との間には関連があり,両者の機能を維持するための対策(運度や食生活などの生活習慣)には共通点が多いと考えられる.

資料論文
  • 塚田 花音, 高橋 知也, 清水 佑輔, 佐藤 研一郎, 小川 将, 高橋 佳史, 山城 大地, 李 岩, 雛倉 圭吾, 飯塚 あい, 古谷 ...
    2025 年19 巻1 号 p. 93-103
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/04
    ジャーナル フリー

     高齢者の周囲との交流の少なさが問題となっており,困難に直面したときに周囲に援助を求めにくいことが指摘されている.近年,様々な人と気軽に交流できるツールとしてSNSがあり,特にLINEは高齢者においても普及が進んでいる.本研究では,高齢女性181名(M = 71.91歳,SD = 5.22歳,65-92歳)を対象として,LINEの利用頻度と援助要請との関連について検討した.その結果,LINEのやりとりを毎日行っている人は,積極的に援助を要請しやすい傾向があった.一方で,LINEの情報の閲覧頻度と援助要請との関連は見られなかった.LINEは,SNSの中でもメッセージを送受信することに特化しており,周囲と容易に交流できるツールである.そのため,LINEを日常的に利用していて,自らメッセージを発信するという行為が習慣化している高齢者は,援助を要請することに対する心理的な障壁が少ないと考えられる.

  • 植田 拓也, 藤田 幸司, 森 裕樹, 相良 友哉, 山城 大地, 倉岡 正高, 澤岡 詩野, 服部 真治, 小川 敬之, 小宮山 恵美, ...
    2025 年19 巻1 号 p. 104-111
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/04
    ジャーナル フリー

     地域包括ケアシステムの構築や地域共生社会の実現に向けた地域づくりのために,介護予防に資する「通いの場」だけでなく,多様な「居場所」も重要な地域資源である.

     しかし,「居場所」に関する定義や類型,「通いの場」との関係性は明確でない.そこで,有識者により構成された研究委員会(以下,研究委員会)により,「居場所」の定義および「通いの場」との関係も念頭に置いた類型が整理された.

     「居場所」となりうる場や活動の類型は,パブリックスペースとしての「通いの場」のタイプⅠ~Ⅲに加え,タイプ0-a「個人の活動・場としての『居場所』」とタイプ0-b「住民を取り巻く多様なつながりのある活動・場としての『居場所』」,パーソナルスペースとして,「自宅・自室・家庭など」が設定された.自治体や専門職が,この類型を活用することで,住民に提示可能な新たな社会参加の選択肢の把握や創出につながると考えられる.

  • ―日中両国の先行研究に基づく考察―
    李 瑞超
    2025 年19 巻1 号 p. 112-120
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/04
    ジャーナル フリー

     本研究は,日中における「自立」概念に関する先行研究を整理・検討し,両国の共通点および相違点を明らかにした上で,双方の「自立」概念の要素を包含する枠組みを提案した.日本の介護サービスでは「自立支援」が重視される一方,中国の現場では十分に理解されていない.その背景には,「自立」に対する認識の違いが影響している可能性があると考えられる.

     本研究では,先行研究から「自立」の要素を抽出し,「自身の力だけでできる」「自分の能力を最大限に活用することができる」「社会的役割を果たすことができる」「必要な支援を受けることができる」「自己の選択や自己決定ができる」の五つの要素により構成される「自立」概念の枠組みを提示した.

     今後は,上記五つの要素に基づいて作成される質問項目で実際のデータ収集を行い,日本の自立支援が中国で受け入れられにくい要因を探り,中国の介護現場に適した支援の在り方を提言する.

論考
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