抄録
サゴヤシはパプアニューギニアの低地、特に北岸のセピック川流域や南岸のフライ川流域では主食として、また重要な補助的食料として利用されている。そして単なる食料としてだけではなく、現地の社会生活では家屋の建築材料や儀礼時の贈与財としてなど、様々な面で重要な役割を果たしている。本論文は、東セピック州ソウォム村において、食料としてのサゴヤシの利用状況を調べ、サゴヤシが主食としてどのように利用されているか、またサゴヤシがソウォム村の生活の様々な面にいかに関わっているかを示した。著者の2人はソウォム村を1993, 1995, 1999, 2001, 2004年に通算8週間ほど滞在し、著者の1人は1999年に6ヶ月間の現地調査を行った。調査は、参与観察法ならびに集中的インタビューの方法で行われた。サゴヤシの民俗分類、サゴヤシからの澱粉抽出作業、調理法、また、家族単位での食料としての利用状況、貯蔵法などの調査を行った。結果として以下のようなことが確認された。1)サゴヤシは現地ではホンサゴ、トゲサゴの区分とともに、7種類に区分されていた。2)サゴヤシから澱粉を抽出する作業においては、原則として各作業は性別による分担が決まっている。通常、幹の選定から髄の粉砕までを男性が、その後の貯蔵までの作業を女性が担当する。3)サゴヤシはほとんど毎日サゴゼリー(サゴ団子)として食され、サゴゼリーは現地住民に主食として認識されている。4)サゴゼリーの料理は、女性のみが行う。5)サゴ澱粉は適切に処理されれば、数ヶ月間、貯蔵が可能である。6)サゴヤシは婚資の一部として、あるいは典型的な食料のシンボルとしてなど、ソウォムの生活の様々な面で重要な役割を果たしている。