Sago Palm
Online ISSN : 2758-3074
Print ISSN : 1347-3972
情報
フィリピン東および中央ビサヤ地域におけるサゴヤシの分布と伝統的な利用法
Quevedo Marcelo A.Loreto Alan B.Mariscal Algerico M.岡崎 正規豊田 剛己
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 13 巻 2 号 p. 17-25

詳細
抄録
 水稲が伝播する以前,乾燥した澱粉質の生産物の長期保存が可能であるサゴヤシは,マレー島嶼部の住民にとって主要な食糧源であった.サゴヤシは,一般のプランテーション栽培作物や農作物が生育不可能な湿地に生育する.ミンダナオ島のいくつかの地域,とくにAgusan Provinceに多数のサゴヤシを見出すことができる.レイテ島では,住血吸虫病が頻発する地帯となっているクリーク,集水地形あるいは湿地に生育する.最近になって,レイテ島のDulag,Palo,Tanauan,Sta. Fe,Alangalang,Burauen,Julita,PastranaおよびJaroにサゴヤシが生育していることがわかってきた.Alangalangには20 ha以上のクランプおよび林と呼べるようなサゴヤシ群生地が存在する.一方,セブ島のCarcar,Argao,Sibonga,Samboan,Ginatilanにはパッチ状あるいはクランプ状のサゴヤシがみられる.生活のための素材としてサゴヤシがいろいろと利用されているインドネシアやマレーシアのような近隣諸国とは異なり,フィリピンでは,サゴヤシが十分に利用されているとは言い難い.フィリピンでは,サゴヤシは主に屋根葺き材に利用されている.年齢の若い小さいサゴヤシの葉あるいは大きく生長しているサゴヤシであっても手の届く葉を採取し,1 mの竹棒を小葉で巻き込んで織り,1枚の屋根葺き材(shingle)を製造する.これはニッパヤシの屋根葺き材よりも耐久性に優れ,8〜10年間は屋根としての役割を果たす.また,サゴヤシの小葉は,小さい帽子や小屋の壁にも利用される.葉軸は箒や編み込みのバスケットに利用される.葉軸・葉柄の皮を剥ぎ取って,編み上げ,家屋や別荘の壁や編み込みマットとする.サゴ澱粉はサゴヤシの幹に蓄積しており,コメや他の食べ物が手に入らないような緊急時に利用するが,通常は,サゴ澱粉からフィリピン人が特に好んで食べる「ご馳走」,パラグシン(palagsing)あるいはスマン(suman),甘いランダン(landang)あるいはビニグニ(benignit)を作るための材料となるサゴパールを作る.固い繊維を持つ樹皮は壁やフローリング,灌漑水田の一時的な水路,燃料として利用される.澱粉抽出残渣は,豚やその他の家畜の餌,庭木のコンポスト,肥料として利用される.
著者関連情報
© 2005 サゴヤシ学会
前の記事 次の記事
feedback
Top