抄録
サラワクの広大な泥炭地の集約的な開発がサゴヤシ栽培のために計画されてきた.しかし,多くの予期せぬ問題が大規模サゴヤシ栽培地で見つかってきた.その1つはサゴヤシの幹立ちである.そこで,この研究では泥炭地の物理的,化学的性質とサゴヤシの生育状況との関係を調べることを目的とした.土壌サンプル,地下水位,サゴヤシの生育に関するデータを集め,Dalatプランテーションの幹形成地帯と非形成地帯とで比較分析した.その結果から,幹形成地帯の土壌では,サゴヤシの通常の生育及び幹立ちに必要な高レベルの灰分(塩基分)と養分(窒素,リン酸,カリウム)が含まれていた.これらの塩基,養分含量は泥炭地帯の周辺部から中心に向かって減少することがわかった.栽培されたサゴヤシの生産性が泥炭の腐植化度との関連で調べられたが,有意な関係は認められなかった.幹非形成地帯の土壌では養分が不足しているので,補足的な養分の供給が絶対に必要であることが推察された.