抄録
サゴヤシ(Metroxylon sagu Rottb.)は,フィリピンの多くの地域の湛水している地帯あるいはクリーク・堤防周辺などに生育する作物の一種である.サゴヤシの葉は編んで屋根葺き材に,葉軸・葉柄は乾燥して薪やフェンスの材料に,樹皮は乾燥して燃料に,髄から澱粉を抽出し,抽出した澱粉はデザートなどに利用できるように加熱乾燥して粒状にし,市場で販売している.フィリピンの伝統的なサゴヤシ澱粉抽出は,ログ採取から少なくとも22工程を必要とする.斧で樹皮を剥ぎ,乾燥し,一連の手作業によって澱粉を含む髄繊維を取り出し,水洗しながら布を用いて澱粉を絞り出し,澱粉を水中で沈積させるものである.全工程には長時間を要し,一本のサゴログ全体から澱粉を抽出するには,10-12日・人で,すべての澱粉抽出工程を完了するには,5あるいは6日が必要である.開発した破砕機は,斧による樹脂剥ぎ,髄の天日干し,手作業による澱粉を含む髄繊維の取り出し,髄繊維からの澱粉の絞り出しのような伝統的サゴ澱粉抽出の障害を解消するものである.この破砕機は,伝統的なサゴ澱粉抽出工程を50%低減させた.直径32 cm,長さ50 cmのログを4つ割りにするのに60-65秒かかるが,一定の破砕技術を持つ技術者であれば,155-180 kg/hrの破砕能力を持つこの破砕機の操作には一人で十分である.簡単な修理やメンテナンスに必要な破砕機の部品は,地方でも市販されているものである.