抄録
東部インドネシアの主要サゴヤシ生育地域であるパプア州ジャヤプラ近郊のスンタニ湖周辺(以下ジャヤプラ),マルク州セラム島カイラツ(以下セラム)及び南東スラウェシ州クンダリ近郊(以下クンダリ)における鉱質土壌の理化学的特性を比較研究した.土壌サンプルは,2005年9月から2008年1月にかけて,それぞれの採集場所において土壌表面から0-15cmと15-30cmの深さから採集した.調査を行った主要サゴヤシ生育地域の土壌の理化学的特性は,土壌深度による差異は小さく,0-30cmの深さにおける土壌の平均理化学的特性は,周辺土壌の特性の影響を受けた.土壌密度(BD)は,クンダリ(平均0.98g cm-3)及びジャヤプラ(同0.89g cm-3)に比べてセラム(同1.35g cm-3)で高かった.生育地の土性は,ジャヤプラではシルト質壌土,セラムではシルト質壌土と壌土,クンダリでは砂壌土,壌土及びシルト質埴土が多かった.土壌pHの平均値は,ジャヤプラではやや酸性(pH6.41),セラムとクンダリでは酸性(それぞれpH5.49, 5.01)であった.全炭素はクンダリ(30.5 g kg-1)でジャヤプラ(27.2 g kg-1)やセラム(9.9 g kg-1)より高かった.平均含有量に基づくと,CEC,全窒素,全炭素はクンダリ>ジャヤプラ>セラムの順に高く,一方,交換性K,有効態Pはジャヤプラ>セラム>クンダリの順に高かった.各調査地域の採集地土壌間の交換性K,CEC及び全窒素の変異は,クンダリ>ジャヤプラ>セラムの順に高かった.さらに,これらの土壌の理化学的特性と既に報告されている同じ地域のサゴヤシの生育とデンプン生産性との関係について検討した.