Sago Palm
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Print ISSN : 1347-3972
研究・調査報告
植物油脂によるサゴヤシ澱粉抽出残渣のエステル化と熱可塑性の付与
佐々木 靖山口 千尋田中 治夫近江 正陽冨永 洋司
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1999 年 7 巻 1 号 p. 1-7

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抄録
 本研究ではプラスチックシート原料として,サゴヤシ澱粉抽出残渣の有効利用法の確立を目指し,化学修飾後の反応生成物の洗浄に適した溶媒の検討,熱可塑性に及ぼす可塑剤添加の効果及びシートの力学的特性の評価を試みた.
 メタノール-水混合溶媒及びメタノール-ヘキサン混合溶媒を用いて反応生成物の洗浄について検討を行った.メタノール-水混合溶媒では反応前後での質量増加率は著しく増加したが,エステル化剤として用いたパーム油の未反応部分が残存していることが認められた.メタノール-ヘキサン混合溶媒(8: 2 v/v)では質量増加率がマイナスを示し,成分の一部が可溶化していることが認められた.混合比(9: 1 v/v)では,未反応のパーム油の残存が認められず,質量増加率もプラスを示した.よって,メタノール-ヘキサン(9: 1 v/v)混合溶媒が,他のメタノール-水混合溶媒などより反応生成物の洗浄溶媒として適していることが明らかになった.エステル化の反応条件については,ケン化による遊離脂肪酸の定量及び赤外線分光分析から140℃で4時間,及び160℃で2時間の条件が他のものよりも適していた.熱可塑性の目視評価では,グリセリンの添加量に伴って熱可塑性が向上し,グリセリンの可塑剤としての効果が確認された.また,140℃4時間の反応条件でエステル化された試料が,他の反応条件でエステル化されたものよりも熱可塑性が高い傾向がみられた.シートの弾性率測定においては,熱可塑性の評価と同様に,140℃4時間の反応条件でエステル化された試料が比較的他のものよりも高い値を示した.
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© 1999 サゴヤシ学会
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