Sago Palm
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研究・調査報告
インドネシア,スラウェシ・マルク地方のサゴヤシのオサゾウムシ食慣行
野中 健一
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1999 年 7 巻 1 号 p. 8-14

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抄録

 本研究は,インドネシア東部のスラウェシ・マルク地方において,サゴヤシのオサゾウムシ(サゴムシ)の食用慣行がどのように繰り広げられているかを食用地の分布と様式に注目して検討した.調査対象地域では,サゴムシの幼虫および成虫が食べられるが,幼虫の方がより広範囲に食べられており,一般的である.サゴムシは,サゴヤシのデンプン利用と結びついて得られるという,生業に付随する採集資源である.複雑な採集技法は確立されておらず,とくに幼虫は容易に確保でき,手近に利用できる資源となっている.しかし,大量に採集が指向されるのでもなく,市場流通もせず,自給的である.一方,味に対する肯定的で高い評価,味を活かそうとする料理および利用形態(加熱・加工プロセス)から,サゴムシは嗜好品的に食物レパートリーを増す役割を担う資源であり,この地の食用昆虫の基層となっている.

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© 1999 サゴヤシ学会
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