抄録
フィリピン・ミンダナオ・アルビヒット,マレーシア・サラワク・ダラットおよびインドネシア・スラウェシ・ケンダリのサゴヤシ栽培地内にコドラートを設定し,個体密度,樹高,地表面における直径,葉数などのサゴヤシの生育に関する調査を1992年から1999年に実施し,それらの経年変化を明らかにした.アルビヒット(沖積土)におけるサゴヤシ(高胸直径5cm以上を計測)の平均個体密度は,3025~3800本ha-1(1998年)および3825~4600本ha-1(1999年)で,ダラットおよぴケンダリで得られた個体密度に比べて,きわめて高かった.1993年の火災後,アルビヒットのサゴヤシ栽培地のサゴヤシは,幹を形成していなかった.これは,サゴ澱粉の生産を目的とするダラットおよびケンダリとは異なり,アルビヒットではサゴヤシ葉を屋根材として利用するためのサゴヤシの栽培管理の差によるとみられる.アルビヒットのサゴヤシの平均地表面直径は,24.8~31.7cm(1998年)および25.7~28.1cm(1999年)で,ダラットおよびケンダリの平均地表面直径よりも小さかった.アルビヒットの平均生葉数は,5.1~6.3(1998年)および5.5~5.7(1999年)で,ダラットおよびケンダリのそれより明らかに少なく,アルビヒットにおけるサゴヤシの栽培が,屋根材のための生葉の採取に重点があり,3カ月ごとに上位3から4葉を残して下位葉を採取する維持管理を実施した結果であると結論することができる.