済生会総合研究所報
Online ISSN : 2759-6966
済生会病院の急性期入院患者数の2045年までの将来予測
山口 直人 見浦 継一藤本 賢治松原 了
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2024 年 2024 巻 4 号 p. 7-18

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抄録
要旨
【目的】 
 各病院の患者が居住する地域の将来推計人口を基に、医療需要に影響する患者の性、年齢を考慮したうえで、2045年までの済生会各DPC提出病院における急性期入院患者数を予測することを目的とした。
【方法】 
 DPC提出病院64施設のDPCデータから、2018/2019年を基準年として、居住する市区町村別の入院患者実数を求め、総入院患者数の80%をカバーする市区町村を、その病院の「キャッチメントエリア」として特定した。各病院のキャッチメントエリアにおける2018/2019年および2045年の性別・5歳年齢階級別人口を日本の地域別将来推計人口(平成30年推計)から求め、各病院の性別・5歳年齢階級別入院受療率が2018/2019年と2045年で変わらないと仮定して、2045年における性・5歳年齢階級別の入院患者実数を推計した。
【結果】
 全国と済生会病院キャッチメントエリアの将来推計人口とを比較した結果、2015年と2045年では、年少期(0~14歳)は全国71.4%の減少に対して、済生会病院キャッチメントエリアでは80.8%、生産年齢期(15~64歳)でも全国72.3%に対して、済生会病院キャッチメントエリアでは81.2%と減少幅は小さかった。前期高齢期(65~74歳)では、全国93.6%に対して、済生会病院キャッチメントエリアでは103.8%と若干の増加を示し、後期高齢期(75歳~)では、全国139.5%に対して、済生会病院キャッチメントエリアでは147.5%と全国よりも高い増加率が予測された。次に、分析対象とした済生会病院64施設全体における2045年の年間患者数の予測値と2018/2019年の患者数と比較した結果、総患者数は103%とほぼ横ばいであるが、年齢別にみると年少期(0~14歳)では50%、生産年齢期(15~64歳)では80%まで患者数は減少すると予測されたのに対し、前期高齢期(65~74歳)では98%とほぼ横ばい、後期高齢期(75歳~)の患者数は133%と大幅な増加が予測された。さらに、病院別に2018/2019年と2045年の急性期入院患者を比較すると、総患者数で最も減少率が高かったのは病院で59.8%まで減少、逆に、最も増加率が高かったのは病院で147.2%まで増加すると予測され、増減には大きな幅があることが明らかとなった。
【結論】
 済生会のDPC提出病院64施設における2045年の急性期入院患者数を推計した結果、年少期(0~14歳)、生産年齢期(15~64歳)の患者数は減少し、前期高齢期(65~74歳)の患者数は横ばい、後期高齢期(75歳~)の患者数は増加することが予測された。高齢者、特に後期高齢者をターゲットにした医療に対する需要が継続的に増加してゆくことが予測される。ただし、各病院ごとの将来推計では急性期入院患者総数が59.8%まで減少する病院から147.2%まで増加する病院まで、非常に幅が大きいことも明らかとなった。
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© 2024 社会福祉法人恩賜財団済生会
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