2011 年 24 巻 1 号 p. 1_51-1_66
広汎性発達障害を有する5 歳男児は,大学の障害児治療教育センターを訪れ,遊戯療法を受けることになった。彼は当初自分の殻に閉じこもっていた。しかし,亀のミニチュアを見つけそれを同一視することで,治療者と交流するようになった。そして彼は箱庭に興味を持ち,その中で赤ちゃん亀をセラピスト扮する様々な虫たちと戦わせた。ついには赤ちゃん亀としての彼自身が子宮としての箱庭の中に入り,治療者がやさしく見守るなか何度も何度も誕生を繰り返した。その後彼は砂を床にまき,広げ,そこで泳いだ。それはあたかも治療者とともに彼自身の創造神話を生きているかのようであった。このプロセスを乗り越えていくなかで,彼は対象と関わる自己を確かなものとしていったのである。