報告する事例は，登校前になると腹痛が起こり登校できないという主訴で受診した小3 の男児である。彼は初診時から小5 の夏休みまでほとんど毎回箱庭を作り続けた。彼の作品に表現された内的世界において，「魔女との戦い」が延々と続いた。その後「魔女対恐竜の戦い」が人間同士の戦いに変化した。さらに「地下の世界」が表現され，「大切なものを守る戦い」が展開した。
彼の背景には，家族において強い支配力を持った大伯母・祖母と母との間の葛藤が存在していた。家庭の中に布置していた否定的母性との葛藤が，箱庭の中では「魔女との戦い」として表現されていたと考えられる。これらの戦いを経て，小さな犬「コロちゃん」のイメージが出現し，彼の自我イメージと考えられた。箱庭の中に，前思春期の内的世界が表現されたと考えられた。
