2016 年 29 巻 2 号 p. 55-66
本研究は心理療法においてイメージを「第三のもの」として理解し,事例を通してその働きについて検討を行ったものである。事例は50代のうつ病と診断された女性への1年半の心理療法過程である。そこでは夢やバウムテストが用いられ,それらがセラピストとクライエントの二者関係における「第三のもの」として機能した。「第三のもの」として機能することによって三者構造が生成され,そこから二者関係以前であった関係性から二者関係が確立されるに至った。それらの体験を経て,これまで曝され「見られる」対象であったクライエントは,「見る」対象へと変化し始め,内側で抱えるための器も生まれ始めることになった。また,バウムによって語りが促進されたが,バウムとその語りには他者性が含まれており,その他者性によって新しい私が作り上げられていくのである。