2018 年 31 巻 2 号 p. 3-17
昨今の日本の心理臨床の現場では,現代の若者の心の構造の変化が指摘されている。本調査では,自己感という概念に着目し,現代の若者の特徴である断片的な自己像に基づく他者との関係,「悩めない」心性が,夢の構造面にどのように反映されるかを調べた。結果,自己感は夢の私の振る舞いだけでなく,夢の中で出来事が展開する土台となる場所・時間・夢の私の視点の連続性にも影響を与えることが示された。また,夢の私には葛藤状況へのとどまりにくさが見られ,これは「悩めない」心性の反映と思われる。しかし「子どもの頃」の夢に比べ,「最近」の夢では夢の私の葛藤が持続し始め,その変化には夢の私の行為主体感や他者感の影響が示唆された。