2020 年 33 巻 1 号 p. 25-37
本研究では,少年鑑別所で自閉症スペクトラム障害の疑いと診断された犯罪少年(殺人未遂)の心理臨床を検討した。この少年(中3)は緘黙の症状を呈していたので,セラピストは,面接では言語的なコミュニケーションを補うものとして,箱庭やMSSM,写真などを用いて関わった。箱庭にはコミュニケーションの回復過程が示された。発達障害の少年の非行臨床においては,被害者意識の理解が重要であり,その理解のためには,情緒的共感性をよりどころにして,心の交流を行うことが重要になること,また,認知や共感性の特性等,障害特性を考慮すれば,発達障害の非行臨床は一般の非行少年の臨床とあまり変わらないのではないかという問題提起を行った。