2023 年 35 巻 3 号 p. 15-27
現代に住む私たちは,かつての時代と比べ,死者とのつながりが希薄になっている。しかし個人的な水準では,現代においても,死者と濃密なつながりを持っている人はいるだろう。本論ではそうした死者とのつながりを持った女性が,面接の過程で死の世界を旅した事例を取り上げる。彼女は現実の世界の中で生きづらさを抱えながらも,自分を大伯母の生まれ変わりと感じていた。そして彼女は,夢の中で大伯母の生きた戦時中を生き直し,そこで彼女はさまざまな死者と出会う。それと同時に彼女は現実の世界でも,死者と関わる仕事を見つける。そして彼女は夢での経験を一つの物語にまとめ上げる。それは死の世界での体験を生の世界に持ち帰ったかのようでもあり,その後から彼女の症状は消失する。