箱庭療法学研究
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原著
小説創作を通した自分が生きる物語の創造
「語れなさ」を抱えた思春期男子との心理療法過程
大林 裕典
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キーワード: 思春期, 小説創作, 語れなさ
ジャーナル 認証あり

2026 年 39 巻 1 号 p. 15-25

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抄録

本研究では,発達グレイゾーンの特性を持つ思春期男子が,小説創作を通じて自らの物語を生成していった心理療法過程について考察した。他者理解や自己の実感に困難を抱えるクライエントの苦悩は,当初,「語れなさ」として身体症状に表出されていた。しかし,ゲームや動画の提示を通じたセラピストとの関わりを土台として,表現の手段は小説創作へと移行した。当初はよくある設定に留まっていた物語は,やがてクライエント自身の内的イメージを受け止める器としての役割を持ち始めた。小説内では,異形の存在や,夢恐怖症のキャラクターが治療を通じて本来の姿を取り戻すプロセスが語られ,クライエントが自らと出会い,統合していく過程が示唆された。最終的にクライエントは,セラピストとの分離という現実の別れを引き受け,新たな現実へと歩み出した。小説はクライエントにとって,自らが生きる物語を形づくる媒体であり,心理療法はその創造に立ち会う場であったと考えられる。

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