2026 年 39 巻 1 号 p. 3-14
本論文では,集団不適応とパニック様の行動を呈した10歳女子の心理療法の過程を報告する。心理療法の初期,クライエントは自分を表現することやセラピストとの関係に入ることを回避していた。それは主体的になることからの退避であり,彼女の課題は「私になること」という前思春期における発達的な課題とも重なっていると考えられた。クライエントは,夢や箱庭などさまざまな次元で自らの内に潜む「私」に出会い,「私」として現実に姿を現していった。さらに「もう一人の私」のイメージが空想の友だちや夢の中の「私」として出現し,「もう一人の私」に照射されることでクライエントの「私」は定位された。心理療法のプロセスを通して,クライエントは主体を,そして自己関係を確立したと考えられた。