産業衛生学雑誌
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勤労者のストレス評価法(第2報) : ストレスドック受検者の1年間における体験ストレス点数の合計点とストレス状態や精神障害との関連から
夏目 誠
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2000 年 42 巻 4 号 p. 107-118

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抄録

我々は勤労者のストレス度を測定するために, ホームズやレイの社会的再適応評価尺度(social readjustment rating scale)に準拠し, 勤労者に多くみられる18項目のストレッサーを追加した, 65項目からなる勤労者ストレス調査表を作成し, 1, 630名の勤労者を対象に調査を行い, ストレス点数を求めてきた.今回, ストレス点数の成果を活用して, ストレスドックを受検した1, 426名の勤労者の, 受検前, 1年間における体験ストレッサーのストレス点数の合計点数(体験ストレス点数の合計点)を求め, ストレス度測定や精神疾患の把握の指標になり得るかどうかを検討した.そこで, 合計点とドックの判定会議で総合的に判断されたストレス状態(過剰ストレス状態を認めない群=認めない群, 過剰ストレス状態が疑われる群=疑われる群, 過剰ストレス状態群)との関連性, 及びICD-10で診断された精神障害(多くはストレス関連疾患である)との関係を分析した.得られた結果は以下のとおりである.1.代表的2事例を提示した.次に, 全対象者の合計点数の分布を求めた.2.認めない群, 疑われる群, 過剰ストレス状態群の順に合計点数の平均値が135点から219点, 312点へと, 有意に点数が増加していった.特に過剰ストレス状態群では, 認めない群の2.3倍の高得点を示したのが注目された.3.ICD-10で精神疾患と診断された者は888名と多く合計点数の平均は312点と高得点であった.健常群に比べ94点も高く, 有意に高得点を示していた.件数法では1.1件の差異を示した.得点法は件数法に比較して, F41とF43に関して, 高い有意差を示し, この結果から得点法の方が差異をわかりやすいと考えた.4.合計点数を100点単位の群で, 精神疾患の占める比率を検討した.100点未満では39.3%にすぎないのに対し, 300点代群では67, 4%, 400点以上の群では78, 8%と高率であった.点数が増加すればするほど, 疾患発症の頻度が高かった.5.以上のことからライフイベント法により体験ストレッサーのストレス点数の合計点を求めることから, 勤労者のストレス状態を測定できると考えた.さらには, 精神疾患との関連性を, ストレッサーの強度から, ある程度予測ができるのではないかと考えた.

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© 2000 公益社団法人 日本産業衛生学会
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