産業衛生学雑誌
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低レベル全身振動と腰痛の量反応関係についての検証
岡田 晃 中村 裕之
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2013 年 55 巻 2 号 p. 62-68

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抄録

目的:全身振動における振動レベル(加速度)が大きい作業は主に建設や採鉱現場での重機での乗務作業とされており,その労働者の健康問題として腰痛の存在が報告されてきた.その作業が腰部の曲げ,捻りを伴う作業などの他の労働条件を伴うため,振動曝露と腰痛の因果関係が疑問視されてきた上に,ごく最近,より小さい振動加速度と腰痛の因果関係を示唆する総説が報告されるに至ったため,低加速度における全身振動を含め,全身振動と腰痛との関係を,量反応関係を中心として総説した.方法:全身振動と腰痛との関係を調べた疫学研究のうち,因果関係を量反応関係についての結果を扱ったものを中心に検証した.その際,同じ目的で検証した総説の内容も取り上げた.結果と考察:CTやMRIなどの病変写真などの客観的な指標を用いた場合,その因果関係を支持する研究はなかった.作業の年数と腰痛との発症に量反応関係を示す報告は多かったが,振動曝露量をAsum(8)(x, y, z 軸の3方向の合成振動値の8時間等価周波数補正加速度実効値)の指標で評価した場合,1.0 m/s2を超えない振動加速度の場合,量反応関係が成り立つことを認めた研究はほとんどなかった.結論:本論文は,Asum(8)を全身振動の許容基準として,わずかであるが勘案できるとした知見に対する反証したものであり,以上から,暫定基準値Asum(8)を0.35 m/s2まで引き下げるとした,日本産業衛生学会の根拠である低レベル曝露の量反応関係を認める研究は存在しないと結論づけることができた.

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© 2013 公益社団法人 日本産業衛生学会
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