産業衛生学雑誌
Online ISSN : 1349-533X
Print ISSN : 1341-0725
ISSN-L : 1341-0725
原著
看護師のストレス反応に対する「いいね!」シール導入の効果
吉田 えり山田 和子森岡 郁晴
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2016 年 58 巻 1 号 p. 1-10

詳細
抄録

目的:メンタルへルスの不調に係る一次予防対策として,職場環境の改善が有効である.本研究では,相互に感謝の気持ちを伝えるサンクスカード,良い点を認め合うOKカードと,ソーシャル・ネットワーク・サービスで使われている「いいね!」ボタンからヒントを得た「いいね!」シールの導入が,職場の友好性を高め,看護師のストレス反応を軽減し得るかを検証した.対象と方法:大学病院に勤務する看護師362名のうち,介入前後のデータ連結に同意が得られたものは156名(43.1%)で,解析対象者は151名(有効回答率41.7%)であった.「いいね!」シールを用いた介入は8週間行った.対照者は,同病院で今回と同じ調査項目に回答した者のうち,連続した2年間のデータを連結できた105名とした.調査項目は,属性,職業性ストレス簡易調査票,首尾一貫感覚(SOC),ストレス対処特性(BSCP),生活習慣(HPI),「いいね!」シールの使用枚数であった.介入効果の検証には,二元配置分散分析を行った.介入に伴う心理的ストレス反応の変化に関連する要因の検討には,心理的ストレス反応の差分を目的変数とし,重回帰分析(stepwise変数選択法)を行った.結果:「いいね!」シールの使用枚数は7,010枚で,看護師1人当たり平均19.4枚であった.「いいね!」シールには,感謝や承認の言葉を書いたものが多かった.心理的ストレス反応の得点は有意な交互作用を認め,介入群は上昇がみられたのに対し,対照群は変化がみられなかった.SOCの処理可能感の得点は有意な交互作用を認め,介入群は上昇がみられたのに対し,対照群は変化がみられなかった.重回帰分析の結果では,心理的ストレス反応に対して,処理可能感とシールの使用枚数が正の関連を示した.結論:相互に感謝や承認の気持ちを伝え合う「いいね!」シールの導入は,看護師のストレス反応を低減させる方策として用いることができる可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2016 公益社団法人 日本産業衛生学会
次の記事
feedback
Top