産業衛生学雑誌
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調査報告
技能実習生の健康に関する文献研究―国際生活機能分類(ICF)を用いた一考察
相田 華絵 森 淑江
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2021 年 63 巻 5 号 p. 162-178

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抄録

目的:本研究の目的は,技能実習生の健康と健康に影響する因子について明らかにし,今後の支援を検討することである.対象と方法:医学中央雑誌Web,CiNii Articles,新聞記事データベースを用い“技能実習”と“健康”をキーワードに2010年1月から2019年9月までに発表された文献・記事及び関連の報告書,機関誌より,技能実習生の健康に関する記事を抽出し,内容分析法を参考に整理した後,国際生活機能分類(ICF)の構成要素に分類した.結果:127文献より,24カテゴリ,71サブカテゴリ,422記録単位が抽出された.ICFの構成要素で最も多く記録単位が抽出されたのは【環境因子】で,カテゴリ《実習先企業・監理団体による支援》(n=108),《不十分な労働関係法令の施行》(n=48)が含まれた.次いで【健康状態】が多く,《技能実習生の死》(n=27),《増加する結核への罹患》(n=24)が含まれた.考察と結論:脳・心臓疾患や結核発症をはじめ,医療機関受診の困難さや過酷な労働環境により,健康を悪化させるハイリスクな状況におかれる技能実習生がいる一方で,健康診断の実施による疾病の早期発見・治療等,健康に良い影響を受ける技能実習生がいることが示唆された.労働環境の改善に加え,技能実習生の理解しやすい言語での健診結果の通知や健診結果の補足説明,地域での多文化共生を促進する支援が重要である.

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© 2021 公益社団法人 日本産業衛生学会
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