産業衛生学雑誌
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原著
特定健康診査に用いられる主観的な咀嚼状態に関する質問項目と男性勤労者における口腔状態の関連性
谷 直道 埴岡 隆樋口 善之太田 雅規山本 良子赤津 順一
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2023 年 65 巻 1 号 p. 9-17

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抄録

目的:近年,口腔状態と様々な疾患の関連性が報告されており,産業保健領域における歯科保健の重要性はますます高まっている.本研究は,特定健康診査の標準的な質問票に新たに追加された「食事をかんで食べる時の状態はどれにあてはまりますか」という主観的な咀嚼状態と口腔状態の関連性について検討することを目的に分析を実施した.対象と方法:対象として2018年4月から2019年3月までに職域歯科健診を受診した20,834名の勤労者のうち,健康診断データに欠損のない40歳以上65歳未満の男性4,011名(51.2±6.1歳)を抽出した.分析対象者を主観的な咀嚼状態の回答によって,咀嚼良好群,咀嚼不良群の2群に分類し,年齢,喫煙習慣,現在歯数,処置歯数,未処置歯数,補綴済(ポンティック,義歯,インプラント)歯数,歯周ポケットの深さ,プロービング時の歯肉出血の有無,口腔清掃状態,Eichner分類について群間比較を行った.さらに,咀嚼不良状態に関する危険因子を検討するため,咀嚼状態を従属変数とし,年齢,喫煙習慣,現在歯数,未処置歯数,補綴済歯数,歯周ポケットの深さ,口腔清掃状態及びEichner分類を独立変数として投入したステップワイズ法による多変量ロジスティック回帰分析を行った.結果:最終モデルに採択された因子と調整オッズ比(OR)及び95%信頼区間(95% CI)は,未処置歯数(OR = 1.18 [95% CI: 1.12–1.24]),歯周ポケットの深さ 3 mm以下に対して 6 mm 以上(OR = 1.63 [95% CI: 1.12–2.37]),Eichner分類A1に対してA2(OR = 1.40 [95% CI: 1.08–1.82]),A3(OR = 1.66[95% CI: 1.09–2.52]),B1(OR = 3.38 [95% CI: 2.04–5.61]),B2(OR = 5.26 [95% CI: 2.46–11.2]),B3(OR = 4.28 [95% CI: 1.20–15.2]),B4(OR = 7.59 [95% CI: 1.06–54.5])であった.結論:本研究の結果,標準的な質問票に追加された主観的な咀嚼状態に関する質問への回答と未処置歯数,歯周ポケットの深さ及びEichner分類の有意な関連性が示唆された.

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© 2023 公益社団法人 日本産業衛生学会
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