産業衛生学雑誌
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調査報告
身体活動の視点から見た通勤手段の実態と活動的な通勤への切替可能性:地域別の記述疫学研究
福西 厚子町田 征己 菊池 宏幸小田切 優子高宮 朋子福島 教照天笠 志保中谷 友樹樋野 公宏井上 茂
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2024 年 66 巻 2 号 p. 90-97

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抄録

目的:車やバイクを用いた不活動通勤から徒歩,自転車,公共交通を用いた活動的通勤への切替えには様々な健康上の利益が期待されている.しかし,不活動通勤者のうち,どの程度が活動的通勤へ切替可能なのかは明らかでない.そこで本研究は日本在住労働者における不活動通勤者の割合と,それらの者のうち活動的通勤へ切替可能性がある者の割合を地域別に明らかにすることを目的とした.対象と方法:本研究はWeb調査を用いた記述疫学研究である.2021年4月~5月に調査会社に登録している20–79歳の3,000名(性,年齢,居住都道府県の割合が日本の人口構成と一致するように抽出)を対象に調査を行った.労働者に対し,通勤に利用する交通手段とそれぞれの片道利用時間(分)への回答を求めた.車またはバイクの片道利用時間が1分以上の者を不活動通勤者,それ以外の者(徒歩・自転車・公共交通のみ利用している者)を活動的通勤者と定義した.不活動通勤者に対し活動的通勤への切替可能性について回答を求めた(0–100%,10%単位で表示した11選択肢).切替可能性は,不可能(0%),難しい(10–40%),ある程度可能(50–90%),可能(100%)に分類した.不活動通勤者の割合と,それらの者のうち活動的通勤へ切替可能性がある者(可能またはある程度可能と回答した者)の割合を地域別に算出した.結果:2,683名から回答を得た.そのうち労働者は1,647名,通勤をしている者は1,551名であった.通勤をしている者のうち不活動通勤者の割合は41.4%であり,地域別にみると地方で高かった.また,不活動通勤者のうち32.9%が活動的通勤への切替可能性があると回答し,労働者全体の12.8%を占めていた.不活動通勤者のうち活動的通勤へ切替可能性がある者の割合は都市部で高かった.一方で,労働者全体のうち切替可能性がある者の割合は地方で高かった.考察と結論:通勤をしている者のうち不活動通勤者の割合は41.4%であった.不活動通勤者のうち活動的通勤へ切替可能性がある者の割合は都市部で高く,地方で低かった.しかし,地方では不活動通勤者の割合そのものが高いため,労働者全体で考えると切替可能性がある者の割合はむしろ高かった.本研究より,地方にも不活動通勤から活動的通勤へ切替えることができる可能性がある者が一定程度存在することが明らかとなった.

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