産業衛生学雑誌
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保健師教育課程における産業保健看護に関する教育体制等の実態
吉川 悦子澤井 美奈子掛本 知里
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論文ID: 2018-020-E

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抄録

目的:本研究の目的は、看護系大学の保健師教育課程における産業保健看護に関する教育の現状を明らかにすることである。

方法:保健師教育課程を有する看護系大学234校を対象に、2017年1月~2月に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した。保健師教育課程の概要、産業保健看護に関する講義・演習の時間数、産業保健看護に関する実習の有無と実習日数、産業保健看護実習の到達度を調査した。項目ごとに基本統計量を算出し現状を把握するとともに、産業保健看護実習の有無による講義等の時間数の差についてt検定を実施した。また産業保健看護実習の到達度については、2日以下の群と3日以上の群に分け、Mann-WhitneyのU検定にて両群の到達度に差がないかを比較した。

結果:回答があった80校を分析対象とした(回収率34.2%)。産業保健看護に関する講義を独立した教科目として実施している大学は、39校(48.1%)で、うち複数の独立した教科目を実施している大学は2校(2.5%)であった。産業保健看護実習を公衆衛生看護学実習の一環として実施していると答えた大学は49校(60.5%)であった。産業保健看護実習を実施している大学の産業保健看護に関する講義の時間数は9.7±11.6時間で、実習を実施していない大学よりも多かったが、有意な差はなかった。産業保健看護実習の日数が2日以下の群と3日以上の群による実習到達度を比較したところ、実習日が多い群において到達度が高い傾向にあり、19項目中16項目は有意な差があった。

結論:看護系大学の保健師教育課程は、選択制、統合カリキュラム、大学院と多様な背景で展開されており、産業保健看護に関する講義や実習は各大学の裁量で展開されている現状が明らかになった。一方で、産業保健看護実習の日数が多いと、学生の実習到達度が高くなる傾向があることから、産業保健看護実習の日数確保は、質の高い保健師教育の実現において重要なことが示唆された。

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