産業衛生学雑誌
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石川県における治療と仕事の両立支援環境の事業所規模および業種間比較
森河 裕子田畑 正司小山 善子池内 里美中島 素子
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論文ID: 2019-005-E

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抄録

目的:疾病を有する労働者の治療と仕事の両立のための支援環境の事業所規模や業種による特徴を明らかにするために,石川県内の事業所を対象に調査を行った.対象と方法:2016年に石川県内の従業員数が50人以上の全事業所1491社を対象に質問紙調査を実施した.688事業所から返信があり(回収率:46.1%),このうち有効回答624件を解析対象とした.質問内容は勤務時間制度や休暇制度の有無,復職面談における産業医の関与,過去3年間の両立支援の有無と両立困難による退職者の有無などである.支援対象疾患はうつ病等のメンタルヘルス不調と身体疾患とした.これらについて事業所規模,業種別間で比較した.結果:過去3年間に治療と仕事の両立支援を行った経験があったのは409事業所(65.5%)であった.支援対象疾患で最も多かったのはうつ病であった.治療と仕事の両立が難しいことを理由に退職した従業員があったのは全体で36.7%であり,医療・福祉業で最も高かった.66%の事業所は治療中の従業員が利用できる制度を有しており,規模が大きい事業所ほど勤務時間制度や休暇制度が整っていた.短時間勤務や時間単位の有給休暇などは製造業や運輸・交通業などの現業系では低かった.また,産業医による復職面談を実施していた事業所の割合は22%と低かった.考察と結論:本調査では約7割の事業所が過去3年間に治療と仕事の両立支援の経験を有していた.制度の整備状況には事業所規模や業種による差が認められた.今後の啓発活動においては,事業場の特性を踏まえた上での具体的な提言を行っていく必要がある.

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