産業衛生学雑誌
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産業医が実施する就業措置の文脈に関する質的調査
藤野 善久高橋 直樹横川 智子茅嶋 康太郎立石 清一郎安部 治彦大久保 靖司森 晃爾
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論文ID: B12003

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抄録

目的:産業医が実施する就業措置について,適用範囲,内容,判断基準など共通の認識が存在しているとは言えない.本研究では,現在実施されている就業措置の実態から,就業措置の文脈の類型化を試みた.方法:就業措置の文脈を発見するために,インタビューとフォーカスグループディスカッション(FGD)を実施した.インタビューは開業コンサルタントの医師6名に行った.またFGDは計6回,19名の医師が参加した.インタビューおよびFGDのスクリプトをコード化し,就業措置の類型化の原案作成を行った.つづいて,これら類型化の外的妥当性を検証するために,産業医にアンケートを実施し,就業措置事例を収集し,提示した類型への適合性を検証した.結果:インタビューおよびFGDのスクリプト分析から4つの類型が示唆された(類型1:就業が疾病経過に影響を与える場合の配慮,類型2:事故・公衆災害リスクの予防,類型3:健康管理(保健指導・受診勧奨),類型4:企業・職場への注意喚起・コミュニケーション).また,産業医アンケートで収集した48の措置事例はすべて提示した4つの類型のいずれかに分類可能であった.また,この4類型に該当しない事例はなかった.収集した事例から,類型5:適性判断を加え,本研究では最終的に,産業医が実施する就業措置として5類型を提示した.考察:現在,産業医が実施する就業措置は,複数の文脈で実施されていることが明らかとなった.ここで提示した5類型では,医師,労働者,企業が担うリスクの責任や判断の主体が異なる.このように就業措置の文脈を明示的に確認することは,関係者間での合意形成を促すと考えられる.

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© 2012 公益社団法人 日本産業衛生学会
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