産業衛生学雑誌
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職場における対人的援助向上プログラムの効果評価
堀田 裕司大塚 泰正
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論文ID: B15001

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抄録

目的:職場のソーシャルサポートを高める可能性のある要因として,組織市民行動における対人的援助がある.本研究の目的は,職場における対人的援助向上プログラムの実施により対人的援助が上昇すること,および,対人的援助の上昇により量的負担が増加するものの,ソーシャルサポートも増加し,心理的ストレス反応が低下することを検証することである.対象と方法:製造業A社に所属する労働者72名を調査対象とした.per-protocol解析を行うために,調査票への欠損回答者,退職者および研修の欠席者の24名を除いた介入群26名(男性22名,女性4名,B事業所所属)と統制群22名(男性19名,女性3名,C事業所所属)を最終的な分析対象とした.また,intention-to-treat解析(以下ITT解析)を行うために,pre-testでの欠損回答者10名を除いた介入群35名(男性30名,女性5名,B事業所所属)と統制群27名(男性23名,女性4名,C事業所所属)を分析対象とした.調査票は,日本版組織市民行動尺度の対人的援助,職業性ストレス簡易調査票の量的負担,心理的ストレス反応,ソーシャルサポートを使用した.介入群の参加者のみ心理教育とロールプレイ,4週間のホームワーク(以下HW)を実施した.両群の参加者に pre test(以下pre),post test(以下post),follow-up test(以下follow-up)を同一時期に実施した.プログラムの効果を検証するために,各効果評価指標を従属変数,時期(pre,post,follow-up)と群(介入群,統制群)を独立変数とし,per-protocol解析については2要因分散分析を,ITT解析については混合効果モデルによる分析を行った.結果:per-protocol解析では,対人的援助および同僚サポートにおける介入群のpost時,follow-up時の得点がpre時よりも有意に高かった.また,同僚サポートにおいて,post時に介入群の得点が統制群よりも有意に高かった.ITT解析では,対人的援助における介入群のpost時,follow-up時の得点がpre時よりも有意に高かった.また,同僚サポートにおける介入群のpost時の得点がpre時よりも有意に高かった.結論:対人的援助向上プログラムの実施の結果,介入群の対人的援助および同僚サポートが有意に増加することが明らかとなった.しかしながら,上司サポート,量的負担の有意な増加,および,心理的ストレス反応の有意な低下は認められなかった.対人的援助を上昇させることで,特に同僚からのサポートを向上させることができる可能性がある.

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© 2015 公益社団法人 日本産業衛生学会
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