産婦人科の進歩
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症例報告
卵巣腫瘍と鑑別が困難であった骨盤内血腫
田中 一範加藤 稚佳子中山 毅
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2006 年 58 巻 4 号 p. 345-350

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抄録

腹腔鏡手術を行った骨盤内血腫の1例を経験したので報告する.症例は19歳の女性.腹痛,不正出血を訴え救急受診.内診,画像所見などから卵巣腫瘍茎捻転による内出血,出血性卵巣嚢胞,内膜症嚢胞などを疑った.翌日,症状が増悪したため,腹腔鏡で観察,手術を行った.骨盤内,子宮右側から直腸右側にかけて血腫を認め,これを順に取り除いたが明らかな出血源はみつけられなかった.病理組織で血腫表面に上皮成分を認めた.骨盤腹膜に内膜症病変(散布状黒斑)を認め,これより採取した生検組織に間質細胞と思われる細胞塊が見られた.血腫の原因は不明であるが,腹膜表面の内膜症病変からの出血による血腫,原因不明の広靭帯内血管の破綻による血腫,卵巣出血が広靱帯内へ進展し血腫を形成した可能性などが考えられた.なお,血腫除去により痛みは消失し,術後経過も順調である.〔産婦の進歩58(4)345-350,2006(平成18年11月)〕

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© 2006 近畿産科婦人科学会
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