産婦人科の進歩
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診療
当科の院内助産システム運用における周産期予後の検討
高橋 佳世岡田 十三市田 耕太郎安田 立子村越 誉本山 覚
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2013 年 65 巻 1 号 p. 11-19

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抄録

近年,妊産婦の妊娠分娩管理に対するニーズが多様化する一方で,産科医師不足や分娩取り扱い施設の減少など産科医療現場には多くの課題がある.このような産科医療情勢に対して,病院内における助産師を主体として妊娠分娩管理を行う院内助産システムが注目されている.当科では平成19年5月より院内助産システムを開設し,平成23年12月までに計825例が分娩した.今回われわれは平成21年1月~平成22年12月の間に当科で分娩したローリスク妊婦のうち,医師管理の妊婦937例と院内助産システム管理の妊婦444例における妊産婦と児の周産期予後を比較検討した.出血量と微弱陣痛症例における入院時から分娩誘発開始までの時間の統計解析はt検定で,その他の統計解析はχ2検定で行い,p<0.05を有意とした.母体の転帰(帝王切開率,分娩時出血量,会陰裂傷の程度)および出生時の児の転帰(分娩週数,Apgar score1分値・5分値7点未満,臍帯動脈血pH7.1未満,臍帯動脈血pH7.2未満,2500g未満の低出生体重児,出生体重3500g以上の児)には両群間に有意な差はなかったが,医療介入(分娩誘発・陣痛促進,吸引・圧出分娩,分娩後子宮収縮剤投与,会陰切開)については,医師管理群が助産師管理群より有意に多かった.また院助管理群のうち62例は胎児因子,母体因子や社会因子で医師管理となり,そのうち30例は医師の複数回の診察で経過に異常がないことを確認して,再度院助管理へ移行して分娩に至った.以上の結果より,分娩時の医療介入は医師管理群で有意に高かったものの,母児の転帰においては有意差を認めず,院内助産システムで医師管理と同等に周産期管理を行うことは可能であると考えられた.〔産婦の進歩65(1):11-19,2013(平成25年2月)〕

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© 2013 近畿産科婦人科学会
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