産婦人科の進歩
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症例報告
泌尿生殖器の先天奇形を合併した腟明細胞腺癌の1例
田中 絢香吉村 明彦小泉 花織中村 幸司渡邊 慶子島津 美紀中辻 友希増原 完治信永 敏克
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2013 年 65 巻 1 号 p. 20-25

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抄録

原発性腟癌は婦人科悪性腫瘍のなかでもまれな疾患で,欧米では腟明細胞腺癌は子宮内でジエチルスチルベストロールdiethylstilbestrol(DES)に曝露された若年女性に関連して発生することが報告されている.今回われわれは,DESの曝露歴がないにもかかわらず,左腎無形成と重複子宮といった泌尿生殖器の先天奇形を伴った腟明細胞腺癌の1例を経験したのでここに報告する.症例は60歳女性,2年前から不正性器出血があったが放置していた.持続する性器出血と下腹部痛を主訴に来院.精査により左前壁より発生した5cm大の腟腫瘤であり,明細胞腺癌stageII(T2NXM0)と診断した.画像検査にて重複子宮と左腎無形成を認めた.全骨盤照射と腔内照射を併用した放射線療法を施行したところ,腫瘍は完全に消失したため経過観察とした.治療開始から7年目に多発肺腫瘍を指摘され,腟明細胞腫瘍の再発と診断した.現在irinotecan-cisplatin(CPT-P)療法を施行中である.DESに関連しない腟明細胞腺癌はまれであるが,泌尿生殖器系の先天奇形を伴った症例が数例報告されている.Müller管形成異常に関連して腟腺症が誘導され,腟明細胞腺癌の発生母地となる可能性が指摘されており,性器奇形のある症例では慎重な精査が必要と思われる.腟癌の予後因子である進行期や腫瘍径を考慮すると,本症例で放射線療法のみではなく化学療法を含めた集学的治療の必要性に関して検討の余地があったと考える.〔産婦の進歩65(1):20-25,2013(平成25年2月)〕

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© 2013 近畿産科婦人科学会
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