産婦人科の進歩
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症例報告
当院で経験した卵巣原発カルチノイド3症例について
小山 瑠梨子大竹 紀子須賀 真美宮本 和尚高岡 亜妃青木 卓哉今村 裕子星野 達二北 正人今井 幸弘
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2013 年 65 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

卵巣原発カルチノイドは本邦のカルチノイドの約1.3%,卵巣悪性腫瘍全体の0.1%以下と極めてまれな腫瘍であり,その組織型は島状・索状・甲状腺腫性・粘液性の4つに分類される.最近,われわれは短期間に3例の卵巣原発カルチノイドを経験したので文献的考察を踏まえて報告する.症例1:60歳2経産,定期検診で指摘されていた右卵巣腫瘍が増大し,内部に充実成分も認められるようになったため,当院紹介受診となった.MRI画像では右卵巣に直径6cmの単房性嚢胞性病変を認め,内部に脂肪組織を含有し嚢胞壁には強い造影効果を認める壁在結節が認められた.悪性腫瘍の可能性も考慮し開腹両側付属器摘出術が施行され,甲状腺腫性カルチノイド(stage Ia)と診断した.症例2:55歳1経産,検診にてCA19-9の高値,両側卵巣腫大を指摘され当院紹介受診となった.受診時,CA125, CA19-9の高値を認め,MRI画像では両側卵巣に(直径 右6cm 左5cm)単房性嚢胞性病変を認め,いずれも内部には脂肪組織を含有し両側性成熟嚢胞性奇形腫を疑う画像であった.腹腔鏡下両側付属器摘出術が施行され,甲状腺腫性カルチノイド(stage Ia)と診断した.症例3:73歳2経産,下腹部膨満感・排尿困難感を主訴に近医受診,経腹超音波にて骨盤内腫瘤を指摘され当院紹介受診となった.受診時,CA125,CA19-9,CEAの高値を認め,MRI画像では骨盤内に直径16×14cmの腫瘤を認め,内部には強い造影効果を示す充実性成分と嚢胞性成分が混在しており,悪性腫瘍を疑う所見であった.開腹子宮両側付属器摘出術が施行され,粘液性カルチノイド(stage IIa)と診断した.術後消化管精査により明らかな病変は認められず卵巣原発と診断した.一般的にカルチノイドは予後良好とされるが,一部に再発・転移をきたした症例も報告されており,今後も注意深い経過観察が必要である.〔産婦の進歩65(1):32-39,2013(平成25年2月)〕

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© 2013 近畿産科婦人科学会
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