産婦人科の進歩
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症例報告
子宮内反および膀胱破裂をきたした子宮癌肉腫の1例
滝 真奈寒河江 悠介稲田 収俊宮崎 有美子和田 美智子横山 玲子坂田 晴美吉田 隆昭中村 光作
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2013 年 65 巻 1 号 p. 26-31

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抄録

子宮内反とは,子宮が内膜面を外方に反転した状態をいう.分娩と関係なく起きるのはまれで,非産褥性子宮内反とともに膀胱破裂が生じた症例の報告は著者が調べた範囲ではない.今回,われわれは子宮内反および膀胱破裂をきたした子宮癌肉腫の1例を経験したので報告する.症例は81歳,2経妊2経産,腹部膨満と意識障害を主訴に当院に救急搬送された.腟鏡診・内診および画像検査で腟内に充填する壊死を伴った腫瘤,腹水貯留と両側軽度水腎症を認めた.骨盤MRI画像から子宮底部から発生した腫瘤による子宮内反が推測された.また血液検査では血清クレアチニンが5.7mg/dlと高値を呈していた.入院後保存的加療にて血清クレアチニンは著明に低下したが,炎症反応は増悪したため開腹すると,子宮底は両側円靭帯と付属器,骨盤漏斗靭帯を引き込みながら内部に陥没していた.また膀胱頂部に3mm径の破裂孔を認めた.膀胱破裂が原因で腹腔内に尿が漏出,血管内に尿毒素(クレアチニン・カリウム)が再吸収され血清クレアチニンが上昇していたと推測された.内反の絞扼が強く子宮整復できなかったため,内反した状態で腹式単純子宮全摘と両側付属器切除ならびに膀胱修復術を施行した.摘出した標本を観察したところ,子宮底部より出血壊死を伴った充実性腫瘤が発生しており,子宮内腔に外向性に発育することで内反を起こしたと考えられた.病理組織診断は子宮癌肉腫であった.術後数週間に腟断端再発したため放射線治療を行ったが,治療中に多発肺転移が出現し,術後4カ月で原病死した.〔産婦の進歩65(1):26-31,2013(平成25年2月)〕

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© 2013 近畿産科婦人科学会
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