2019 年 71 巻 3 号 p. 247-252
陰唇癒着症は左右の陰唇が正中で癒着する外陰部の異常であり,排尿障害や外陰部違和感などを主訴に受診することが多い.閉経後の低エストロゲン状態が発症に関与すると考えられており,脆弱になっている外陰部に炎症や感染あるいは外傷などが加わって発症する.エストロゲン軟膏の局所塗布や外科手術により改善した報告も認めるが,再癒着も報告されている.今回われわれは,術後の再癒着や瘢痕拘縮を予防する目的で,形成外科的手技のZ形成術を応用して外科的治療を行った症例を経験した.症例は閉経後の56歳女性,3年前ごろより外陰部付近のかぶれを繰り返し,接触時の疼痛,性交困難があった.近医産婦人科で軟膏等の対症療法で症状改善せず,陰唇癒合を指摘され当院を受診した.左右の小陰唇が正中で癒合し,癒合した小陰唇の奥に尿道口を視認した.手術は腰椎麻酔下で行い小陰唇癒着を用手剝離し,小陰唇から大陰唇にかけて左右1カ所ずつZ形成術を行った.術後は定期的に外陰部の洗浄を行い,軟膏塗布とエストロゲン腟錠を用いた.術後11カ月の時点でエストロゲン腟錠との併用により,疼痛や発赤等の症状・再癒着は認めていない.本法は癒着再発予防に対して有用な手術法と考える.〔産婦の進歩71(3):247-252,2019(令和元年8月)〕