産婦人科の進歩
Online ISSN : 1347-6742
Print ISSN : 0370-8446
ISSN-L : 0370-8446
症例報告
ハイブリッド手術室にて動脈塞栓術に引き続き子宮摘出術を実施した大型かつ血流豊富な子宮平滑筋肉腫の1例
長辻 真樹子上田 尚子岡田 麻美村上 誠徳山 治甲田 洋一川村 直樹
著者情報
ジャーナル 認証あり

2020 年 72 巻 3 号 p. 259-265

詳細
抄録

大型かつ血流豊富な子宮肉腫の手術では,しばしば多量出血をきたし、手術完遂に難渋することがある.今回,術前に子宮および卵巣動脈塞栓術を施行し,出血量を少なく抑え手術を完遂しえた大型かつ血流豊富な子宮平滑筋肉腫症例を経験した.症例は42歳,0妊,9年前より不妊治療中の患者であった.下腹部腫瘤の増大を主訴に前医を受診し,MRI検査,PET-CT検査にて肝転移,肺転移を伴う約20 cm大の大型腫瘤で,子宮肉腫が疑われ当院に紹介となる.経子宮頸管的針生検にて平滑筋肉腫と判明し,ドセタキセル・ゲムシタビン療法を行うもPDであった.パゾパニブに変更したところ,子宮腫瘍と肝転移巣は不変であるも肺転移巣の縮小を認めたため,子宮全摘出術と肝部分切除術を施行した.子宮腫瘍は,血流が著しく豊富で多量出血が予想されること,腫瘍が大型で子宮摘出を完遂しなければ閉腹困難が予想されることから,ハイブリッド手術室にて子宮動脈と卵巣動脈の塞栓術後に引き続き手術施行し,術中出血量を270gに抑えることができた.本症例と当院での他の2例およびこれまでの報告を含め,大型の子宮肉腫症例の術前動脈塞栓術の有用性について検討した.〔産婦の進歩72(3):259-265,2020(令和2年8月)〕

著者関連情報
© 2020 近畿産科婦人科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top